Web会議システム利用例|介護者在宅就業支援
介護者在宅就業支援
内閣府による平成30年度高齢社会白書によると、介護保険制度における要介護又は要支援の認定を受けた人は633万人となっています。10年前と比較しますと約192万人の増加で、今後も増加していくことが予測されます。さらに平成25年に社会保障審議会医療部会が発表した資料によると、国民の60%以上が自宅での介護を望んでいますし、政府も現在在宅介護を推進しています。
在宅介護が望まれる理由
在宅介護の一番のメリットは、介護される側が住み慣れた環境ですごすことができるということです。高齢者は環境の変化による心理的ストレスが引き金になり心身ともに体調を大きく崩しその状態が続くことがあります。ですが、自宅で、それまで通りに暮らすことで気持ちと体調も安定し生活の質が向上、介護する側される側双方が穏やかに過ごすことができます。また家族が介護することで介護費用を抑えることもできます。
在宅介護が推進される理由
在宅介護が推進される背景には、まず国民の半分以上が介護する側またはされる側として最後まで自宅で過ごしたいと願っていることが挙げられます。介護する側としては自宅で最後まで一緒に過ごして世話をしたい、また介護される側としては介護や看護が必要となったとしても最期は住み慣れた家で自分らしく生活したいと望む人が増えているという必要に応える形で在宅介護が行える環境の整備が進められています。さらに現実問題としては病床削減の受け皿にしたいという狙いからも在宅介護は推進されています。
在宅介護の課題
このような介護者双方の想いを実現し、医療費に関する現実問題に対応するために在宅介護が推進されはじめました。そのための法整備として、2017年1月1日に育児介護休業法が改正され、介護休業制度や介護休暇制度が変更されました。介護休暇は、対象家族ひとりに対して年間5日まで、介護休業は対象家族1人につき93日(3回まで分割取得可能)と既定されています。
しかし、介護は終わりが見えず、長く取り組まなければならないライフイベントです。在宅介護には、介護される側の予測できない体調の変化や行動にともなう突発的なアクシデントへの対応が不可欠で、介護サービスを使用していても少なからず介護する家族の時間と労力が求められます。こういった世話を人知れず(親族や職場には知らせず)に、仕事と両立しながら行い、心身ともに消耗してしまい職を手放すことを選択をする人は後を絶たちません。
平成29年度に介護のために離職した人は約50万人、離職者総数の2%ほどですがそのうち22万7700人(約45%)が40-59歳でした。40~59歳といえば企業の中でも中堅、経済活動においてはなくてはならない存在ですので、その年代の離職は企業にとっても人材という点で大きな損失となります。経済産業省によると、介護離職に伴う経済全体の付加価値損失は1年当たり約6,500億円と見込まれています。(経済産業省 第1回産業構造審議会 2050経済社会構造部会(2018年9月21日))。
介護離職は人材流出や経済損失も招きますが、それ以上に退職すれば収入も減り社会とのつながりが薄れ、介護する側が体調を崩してしまうケースも少なくありません。そこで介護離職による弊害を防ぐために効果的なのが、Web会議システムを使用したテレワークという働き方です。
介護離職による弊害を防ぐためにはテレワーク
仕事と介護の両立は介護する側に時間による制約という大きな負担を強います。しかしこれはテレワークにより解消することが可能です。
時間的制約を最小限にできるテレワーク
テレワークの特徴としてまず通勤がない、という点が挙げられます。朝晩の通勤にかかる時間ですが、平成28年度の調査では通勤通学時間の全国平均は往復合計で1時間19分でした。一日のうち1時間19分の空白の時間があれば、例えばその時間を介護する側のリフレッシュに充てることも可能です。また通勤が無ければ通勤電車で受けるストレスも避けられますので、介護する側の生活の質も向上し、余裕のある介護ができるようになるかもしれません。
「仕事を続けたかった」という気持ちに応えるテレワーク
平成24年度厚生労働省委託調査の「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」によりますと、離職時の就業継続の意向については男女ともに5割強が「続けたかった」とし、二人にひとりは就業継続を希望していたことがわかります。また離職後「負担が増した」としている人は、「精神面」について64.9%、「肉体面」について56.6%、「経済面」について74.9%であり、負担減となると考え離職したものの、逆に負担が増したとの回答割合が高くなっています。
仕事を続けたくても続けられない、その中で離職してかえって負担が増すとさらに「こんなはずではなかった、仕事を続けていればよかった」という気持ちが強くなり、それが介護をする側のメンタルにダメージを与えることも容易に考えられます。
そういった、仕事を続けたいが辞めざるを得ないのでは?という介護者が離職後に陥りがちな問題も、テレワークで仕事を続けることにより避けることが可能です。
介護と仕事をテレワークで両立することで…
時間に余裕が生まれ、介護する側される側双方のストレスが軽減されます
完全在宅勤務による仕事と介護の両立の経験談
Web会議システムを利用した完全在宅勤務による仕事と介護の両立に関して経験者の実体験を具体的にご紹介しましょう。始業時間近くになるとテレワーカーはパソコンを立ち上げ、ブラウザからWeb会議システムを立ち上げてWeb会議室に入室します。パソコンのカメラの前に着席し「出勤」します。社員のお互いの様子はWeb会議システムのパソコン画面から確認することが可能です。
始業終業時間が決められてはいますが、介護を受ける家族の体調により往診などの対応が必要な場合は、事前(直前でも可)に連絡し、勤務時間帯の変更を行うことが可能です。
テレワーク時の工夫
着席したときカメラに写る背面にはパーティションを置いて、生活空間が見えないようにしています。またマイクは話し合いが必要な場合のみオン、通常はオフにして生活音がWeb会議室に伝わらないようにしています。
テレワーカーの勤怠管理
勤務時間は、Web会議室の入退室ログと各自が打刻するタイムカードツールで、業務内容は業務報告書で管理します。管理者がテレワーカーの作業進捗をこまめに確認し管理しますが、テレワーカーがWeb会議室に常時ログインし、カメラに姿を映すことでテレワーカーの状態が会社側から確認しやすくします。
お互いのスケジュールはGoogle Calenderで共有し、出張や会議の予定を調整します。
コミュニケーションについて
報告連絡相談は同じ資料を見ながら行ったほうが、理解が深まり効率が上がります。Web会議システムのファイル共有機能ではパソコンで見えるほとんどの種類のファイルを共有することが可能です。同じ資料見ながら、時には書き込みをしながら連絡相談を行い説明を受けることで効率良く業務をすすめています。
テレワークと介護の両立について
テレワーカーがケアを受ける家族のすぐ近くで仕事をするなら、家族の急変に気づきやすくなり、すぐに声をかけて安心させたり、生活介助も迅速に行えます。
通勤時間が不要なので、出勤ぎりぎりまで家事や介護をしたり、通勤で使っていた時間を自分の休養や自己啓発に充てることも可能です。